死ぬ前に読みたかった本、一冊目「不良少年とキリスト」
死ぬことばかり考えている僕だけど、読書が好きだ。この死ぬ前に読みたかった本というのは、その名の通り、死にたい、と思ったときに、あの本読みたかったな、と思った本。結局、挙げていくときりがないので、そんなのどうでもいい、死にたい、ってなったんだけどね。
一冊目は、
坂口安吾「不良少年とキリスト」
僕の言う、死ぬ前に読みたかった本には二種類あって、未読で、読んでおきたかった、という本と、昔読んで、救われた本でもう一度読みたい本。
「不良少年とキリスト」は、昔読んで救われた方だ。
もう十日、歯がいたい。右頬に氷をのせ、ズルフォン剤をのんで、ねている。ねていたくないのだが、氷をのせると、ねる以外に仕方がない。ねて本を読む。太宰の本をあらかた読みかえした。
こんな書き出しではじまる。坂口安吾の文章はツーカイで、ゴーカイで、読んでいて気持ちがいい。そして、予測不能だ。歯痛の話から、何処へ運ばれていくのか、読んでみるとわかる。僕は寺田寅彦も、予測不能で好きなのだが、寅彦の文章は思わぬところにひょっこり現れる面白さで、安吾のほうは、もう全く思考回路が違っていて、でもテンポがいいので、なんだか、自分も安吾になった気分で、ハテンコーに笑いたくなる。
とにかく、言いたいことはたくさんあるのだけれど、結論から言うと、死にたい人は、とりあえず、安吾を読んでほしい。
僕は、「不良少年とキリスト」を読んで、初めて、生きようと思ったし、生きなければならない、と思った。
それから、一番の収穫は、どうして生きていかなければならないか、なんとなくだけれど、合点がいったこと。
死ぬ、とか、自殺、とか、くだらぬことだ。負けたから、死ぬのである。勝てば、死にはせぬ。(中略)人間は生きることが、全部である。死ねば、なくなる。名声だの、芸術は長し、バカバカしい。私は、ユーレイはキライだよ。死んでも、生きてるなんて、そんなユーレイはキライだよ。
僕も、不良少年だったんです。
今日は、桜桃忌、なので、久しぶりに読みたくなった。